【11月の養生(5)風寒証と風熱証】11/29配信メルマガ#22

先週に続き、風邪のお話です。

実は「風邪(かぜ)」というのは正式な病名ではありません。

西洋医学的には「急性上気道炎」と言います。ウィルスなどが上気道(鼻や喉)に感染

することで炎症が起き、発熱、倦怠感、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、喉の痛み、咳、痰

などの様々な症状があらわれます。

現代医学での治療法は、解熱鎮痛剤や抗アレルギー剤、咳止めなどの薬で症状を抑え、

安静にするというものになるでしょう。


西洋医学では「この病気(病名)にはこの薬」と決まっていますが、東洋医学では、その

症状や原因から病気を弁証し、寒熱・虚実・表裏を判断して治療をします。

ですから、症状が同じでも違う漢方薬を用いることがありますし、逆に症状は全く違う

のに同じものを使うということもあります。


漢方薬では「風邪といえば葛根湯」のイメージがありますが、ひとことに「風邪」と

言っても、それぞれ証は違います。どんなときでも葛根湯でよいのでしょうか。

今回は代表的な「風寒証」と「風熱証」について見ていきましょう。


風寒証のかぜは「寒」の性質が強いかぜです。症状は、悪寒、頭痛、首・肩・背中の

筋肉のこわばり、関節痛、水っぽくて薄い鼻水や痰、鼻詰まり、くしゃみ、などです。

寒気が強く、手足が冷える、冷たいものは飲みたがらない、初期にはあまり発熱はなく、

透明で薄い尿がたくさん出る、といった寒性の症状があります。

このようなかぜのときは身体を温め、汗をかいて邪気を追い出すという治療方針になり

ます。これを助けてくれるのが葛根湯です。葛根湯には、温性の生薬である麻黄、桂枝、

生姜などが中心に入っています。もし葛根湯が手元にない、すぐに手に入らないという

ときは、温性の薬味であるネギやショウガなどをお粥やスープなどに入れて摂るのも

良いでしょう。カラダの内側からも外側からも温めて、邪気を追い出しましょう。

葛根湯は、かぜの初期、ゾクッときて、これから熱が上がりそうだな、と感じたときに

飲むのがオススメです。


風熱証のかぜの症状は、はじめから熱が出る、喉が赤く腫れて痛む、黄色く粘った鼻水

や痰が出る等です。ひきはじめから寒気がほとんどなく、冷たい飲み物を好む、氷枕が

気持ち良い、手足がほてる、濃い尿が出る、舌が赤い、といった熱性の症状が出ます。

このような風熱証のかぜのときに、身体を温める作用のある葛根湯を服用してしまうと、

余計に熱症状が悪化してしまいます。

風熱証のかぜのときには、清熱解毒作用(熱を冷まして、細菌やウィルスを退治する)の

ある生薬を配合した銀翹散(ぎんぎょうさん)などがよく用いられます。


風邪は症状が変化しやすいので、よく状態を観察し、そのときに合った対処をすること

が大切です。

「風邪は万病の元」「風邪は百病の長」とも言われます。ひきはじめの素早く適切な

対応も大切ですが、ふだんからかぜをひきにくいカラダ作りをしていきましょう!

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今週もお読みいただきありがとうございました。

風邪の常備薬として家に置いておくなら、葛根湯と銀翹散があると良いと思います。

今回は代表的なふたつのタイプの風邪の症状について述べましたが、他にも、胃腸の

症状がでたり、熱が長引いたり、咳がひどかったり…と様々な症状があると思います。

軽いかぜで病院に行く必要はないと思いますが、家庭で対処が出来ない場合は無理せず

受診してくださいね。

漢方養生アドバイザー® 吉澤茜

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